照明基礎

レベル/ 対象者:基礎/ CINEMA 4Dを少し使える人
対象ソフトウエア、プラグイン:CINEMA 4D R12 Broadcast以上

参考とする写真を見る。よく見る。もう一度見る。そして自分でも写真を撮ってみる。

冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
010 1_照明 ライト、デフォルトライト、影、レイトレース、減衰、GI、グローバルイルミネーション、エリアシャドウ、HDR画像 2011.3.23
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Step 1

ライトオブジェクトを作る

 これからライトについて説明します。それではサンプル010aを開いて、「ビューをレンダリング」してみて下さい。

図010-1

 最初の一歩とはいえ、何とも殺風景な絵です。このシーンにはまだライトオブジェクトがありません。しかし、ライトがないと何も見えなくて不便なので、「デフォルトライト」という仮のライトが、自動的にカメラの左側に発生してシーンを照明しています。

 デフォルトライトは、オブジェクトではないので明るさや色を編集できません。また、ライトオブジェクトを追加すると自動的に消えます。

 また、強制的に消したい場合は、「レンダリング設定 -> オプション -> デフォルトライト」のチェックを外して下さい。デフォルトライトを無効にして「ビューをレンダリング」すると、真っ暗な画像がレンダリングされます。

図010-2

 それでは「オブジェクト -> シーン -> ライト」を選択して、シーンにライトオブジェクトを追加しましょう。CINEMA 4Dのメニューには7種類のライトが用意されていますが、全て同じオブジェクトで、ただ設定が違っていたり、エクスプレッションがついているだけです。

 追加したライトはシーンの原点(つまり床の中心)に発生します。まず名前を「light」に変更し、「light_base」オブジェクトの子にし、位置を合わせ、「ビューをレンダリング」してみて下さい。

図010-3

 まだまだですが、ライトの位置がカメラから天井に移動したことで、少しは立体感がでました。

 

 

Step 2

 次に、ライトが影を落とすように設定します。CINEMA 4Dのライトには3種類の影がありますが、一番よく使うのは「レイトレース」です。「シャドウマップ」は、計算が速いので昔はよく使いましたが、細かい影を描けないので現在はほとんど使いません。また、「エリア」は計算が遅いので、GIと組み合わせる等必要な場合のみ使います。

 それでは、「light」を選択し、属性マネージャの一般タブで「影のタイプ」を「レイトレース」に変更し、「ビューをレンダリング」して下さい。

図010-4

 影の中が真っ黒ですが、影が生じたことで床に対する接地感がでました。


 従来であれば、この影の中に陰影を付けるため、補助的なライトを何個か追加しました。現在でもGIの使えない「CINEMA 4D Prime」ではこの手法を使いますが、GIを使えばより簡単に正確な陰影を表現できます。したがって、今回は補助ライトを追加せずに、話を次に進めます。

 

 

Step 3

減衰

 次に、ライトから放射された光が減衰するように設定します。CINEMA 4D R12は、レンダリングの計算をリニア空間で実行するようになっているので、光の減衰は現実と同じように「(距離の)2乗に反比例」を選択します。

 また、GIの計算やIESライトの計算もリニア空間が前提となっているので、R12ではようやくこれらを正しく統合してレンダリングできるようになったわけです。逆に言うと、R11までのCINEMA 4Dでは、レンダリングをsRGB空間で行っていたため、どのように設定しても光の減衰を正しく計算できませんでした。

 それでは、「light」を選択し、属性マネージャの詳細タブで「減衰」を「2乗に反比例」、「減衰基準距離」を「300」に変更し、「ビューをレンダリング」して下さい。

図010-5

 依然として影の中は真っ黒ですが、壁の上部に比べて床が暗くなり、ライトの存在感が増しました。

 

 

Step 4

GI(グローバルイルミネーション)

 次に、GIを使ってレンダリングしてみます。GIという言葉の元々の意味は、「光が持っている性質を全て(グローバル)計算して照明(イルミネーション)を表現する」です。したがって、レイトレーシングによる光の鏡面反射や屈折もGIに含まれます。しかし、現在のCINEMA 4Dで使われる「GI」という言葉はもう少し限定されていて、パストレーシングによる「オブジェクト間の相互反射」または「間接照明」を意味します。

 それでは、レンダリング設定で「特殊効果」から「グローバルイルミネーション」を選択し、「ビューをレンダリング」して下さい。

図010-6

 「明るすぎる」、「影のエッジがシャープすぎる」等の問題があるものの、ずいぶんリアルになりました。

 しかしGIの計算にはレイトレーシングとは比較にならない程の時間がかかります。たとえば私のMacBookでは、ステップ3のレイトレーシングの計算に2秒しかかかりませんでしたが、GIの計算には32秒もかかりました。一般的にGIの計算にはレイトレーシングの数十倍の時間がかかるのです。

 しかしまた、GIで得られる自然な画像をレイトレーシングで得るのは不可能です。一度GIを使ってしまうと、もうレイトレーシングの絵には戻れません。つまり、GIを使いこなす以外に道はありません。

 

 GIを使いこなすための基本は次の二つです。

1. 可能な限りシーンをシンプルに作る。

2. GIの設定を最適化する。

 1.に関して、昔は「照明の設定」というと「補助ライトをたくさん置くこと」を意味しました。しかし、GIを使う場合は、ライトの数を必要最低限に抑える必要があります。また、可能であればライトを「発光するマテリアル」や「レフ板」に置き換えます。また、オブジェクト数やポリゴン数も可能な限り少なくし、鏡面反射や屈折するマテリアルも必要最低限にします。

 2.に関して、GIの設定は非常に重要です。なぜなら、設定の善し悪しによってレンダリング時間が何百倍にも変化し、また設定のアンバランスにより「レンダリング時間は長くなったのに、画質は下がった」というような不幸なケースもよく起こるからです。GIの設定については、次の011章で詳しく解説します。

 

 また、「速いコンピュータを買う」というのはほとんど意味がありません。速いコンピュータを買うと、「コンピュータが速いから、シーンは複雑なままでいいだろう。GIの設定も適当でいいだろう」という「油断」が発生し、結局いい絵を作ることができないのです。

  上にも書いた通り、GIでは「レンダリング時間と画質の逆転」もよく起こります。「速いコンピュータを使えば、それだけ多くの試行錯誤ができる」と考えて、GIの設定を理解するように努めて下さい。

 

 

Step 5

HDRとエリアシャドウ

 ここでは、ステップ4で残っていた「明るすぎる」、「影のエッジがシャープすぎる」という問題を解決します。

 まず、「明るすぎる」という問題は、32bitのHDRフォーマットを使うことで簡単に解決できます。従来の8bitや16bitの画像フォーマットを使う場合、シーンの明るさはレンダリング前に調整しておく必要がありました。そして、画像の中の白く飛んでしまった部分を後で回復するのは不可能でした。

 しかしHDRフォーマットを使うと、この「白く飛んでしまった部分」を後からどうにでも回復できるのです。それではやってみましょう。まず、レンダリング設定の「保存」タブで、「ファイル」に適切なファイル名を指定し、「フォーマット」を「Radiance(HDR)」に変更し、「画像表示にレンダリング」を実行します。

図010-7

 ここで画像表示ウインドウを見ると、ステップ4でレンダリングした「明るすぎる」画像が表示されているはずです。しかし、ウインドウ右にあるフィルタ機能を有効にし、「露出」の値をたとえば「-1」にすると、全体が暗くなり、球体の上部や壁の上部等の白く飛んでいた部分の色が正しく表示されるはずです。

図010-8

 このように、HDRを使えばシーンの明るさに気を使わずに作業を進められます。HDRフォーマットからPSDやJPEGフォーマットへの変換は、Photoshop等の画像編集ソフトを使って簡単にできます(CINEMA 4D R12.043以前の画像表示ではバグのためできない)。


 次に、「影のエッジがシャープすぎる」という問題についてですが、これは別に間違いではありません。光源が「完全な点」であれば確かにこのような絵になるはずです。しかし、普通の照明器具には必ず「大きさ」があり、それで不自然に見えるのです。したがって光源の大きさを影に反映させてやれば、自然に見えるはずです。

 それでは、「light」を選択し、属性マネージャで一般タブの「影のタイプ」を「レイトレース」から「エリア」に変更して下さい。また、詳細タブで「エリア形状」を「ディスク」に変更して下さい。

図010-9

 ここでエディターを見ると、「light」の周りに円が表示されるはずです。ただし、円が直立しているので、座標タブで「P」の値を「-90」に変更し、水平にします。

 CINEMA 4Dでは、ライトは常にZ方向を中心として光を放射します。点光源の場合は、光を均等に放射するので関係ありませんが、ライトの「放射タイプ」を「スポット」に変えたり、「影のタイプ」を「エリア」に変えた場合等は、ライトの向きを調整するのを忘れないようにして下さい。

図010-10

 この状態で「画像表示にレンダリング」を実行し、露出量を「-1」にすると次のような自然な画像が得られます。

図010-11

 これが、この簡単なシーンを使って現在のCINEMA 4Dで作れる(ほぼ)最高の絵です(サンプル010b)。しかし、エリアシャドウを使ったために、レンダリング時間はさらに延びて「46秒」になってしまいました。

 ここまでは、エリアシャドウやGIの設定をデフォルトのまま使っていますが、次の011章では設定を変えることによってレンダリング時間と画質がどのように変るかを説明します。