照明基礎

レベル/ 対象者:基礎/ CINEMA 4D基礎を少し使える人
対象ソフトウエア、プラグイン:CINEMA 4D R12 Broadcast以上

参考とする写真を見る。よく見る。もう一度見る。そして自分でも写真を撮ってみる。

冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
014 4_IBL_1 IBL、イメージベースドライティング、Skyサンプラー、IR、HDRパノラマ、 2011.3.4
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Step 1

IBL(イメージベースドライティング)

 イメージベースドライティングというのは、「ライトの代わりに画像を使ってシーンを照明する」ことです。012章では「発光するオブジェクトを使ってシーンを照明する」方法について説明しましたが、それをさらに一歩進めた方法だと言えます。

 まずIBLの利点について三つ説明します。

1. 画像を使って照明するので、3Dオブジェクトの色や陰影がその画像によく馴染む。
 したがって、実写画像に3DCGの画像を合成する際によく使われます。

図014-1

2. 照明だけでなくハイライトや鏡面反射もリアルに表現できる。
 したがって、周囲に写り込むオブジェクトを作る必要がなく、シーンの構成が非常に簡単になります。

図014-2

3. 写真を扱うことで絵作りの勉強ができる。
 実はこれはとても重要なことです。3DCGでリアルな画像を作るには、技術以前に「リアルとは何か」を理解しておく必要があります。そして、この理解は現実の世界を注意深く観察することによって得られます。写真そのものは現実ではありませんが、ものを注意深く観察するための手段として、また観察力を養うための訓練方法としてとても有効です。

 下の写真は今回のサンプルファイルに使用するHDRパノラマ画像で、私が撮影しました。-10EVから0EVまで5段階に露出を変えて撮影した合計150枚の写真を合成して作っています。カメラはCanon EOS kiss X4、レンズはSigmaの15mmを使いました。

図014-3a

HDRパノラマ画像をダウンロードする(約9MB)
HDRパノラマ画像の明るさを変えたムービーを見る
150枚の元画像を見る(約500KB)

図014-3b

HDRパノラマ画像をダウンロードする(約9MB)
HDRパノラマ画像の明るさを変えたムービーを見る

 

 次にIBLの欠点について三つ説明します。

1. そもそもIBL用の画像を作るのが難しい。
 IBLに使う画像は二つの点で特殊です。一つは、シーン全体を覆って照明するため「パノラマ写真」であること。もう一つは、太陽などの明るい部分の情報を正確に持っている「HDR画像」であることです。

 10年前にフィルムカメラを使ってHDRパノラマ画像を作るのは本当に大変でした。しかし、現在ではデジタルカメラで数十枚の写真を撮影し、それをつなぐことで比較的簡単に作れます。また、そのためのハードウエアやソフトウエアもいろいろ市販されています。IBL用にHDRパノラマ画像の素材集もいろいろ市販されていますが、私としては、絵作りや写真の勉強も兼ねて自分でHDRパノラマを作ることをお勧めします。そんなに難しいものではありません。

2. レンダリング時間が長い。
 GIを使ってコントラストの高いシーンをレンダリングするので、どうしてもレンダリング時間が長くなります。

3. 空など遠くにあるものは問題ないが、地面や壁など近くにあるものは扱いが難しい。
 これはIBL用の画像を空オブジェクト(無限球)に貼付けた場合、「それに触れない」からです。この問題は、特にオブジェクトを床に置いて影を描かせる場合に顕著になります。

 

 

Step 2

IBLを使ってレンダリングしてみる

 それでは、さっそくIBLを使ってレンダリングしてみましょう。まずステップ1に戻ってHDRパノラマ画像を2枚ダウンロードしてください。次にサンプル014aを開いて下さい。このサンプルには、GIの効果を確認しやすいように中庭のある建物を簡略化したオブジェクトが入っています。それでは「画像表示にレンダリング」して下さい。

図014-4

 最初は、011章と同じGIの設定でレンダリングしてみました。レンダリング時間は「18秒」と短いものの、ひどい絵です。011章のサンプルでは明るさの変化が少なかったので、この設定で問題なくレンダリングできました。しかし、今回使ったHDRパノラマ画像は非常にコントラストが高く、「ストカスティックサンプル」が「低」ではムラが出てしまいます。それでは「ストカスティックサンプル」の値を「高」にして再度レンダリングしてみましょう。

図014-5

 レンダリング時間は「42秒」に伸びましたが、依然としてひどい絵です。ほとんど変わっていません。それでは、「レコード密度」の値も「高」に上げてみましょう。

図014-6

 レンダリング時間は「130秒」に伸びましたが、やはりほとんど変わっていません。パラメータをこれだけ変えても変化がないということは、つまり「ダメ」ということです。このままパラメータをいじっても、永久にきれいな絵は出てこないでしょう。

 

 結論として、デフォルトのGIモード(IR)ではIBLをレンダリングできない、と言えます。

 

 

Step 3

Skyサンプラー

 そこで、GIのモードを変えてみます。CINEMA 4DのGIには大きく分けて「IR」、「QMC」、「Skyサンプラー」と三つのモードがあります。各モードは、GIの原理(パストレーシング)は共通ですが、計算の手法が異なっていて、それぞれに得手不得手があります。そして「Skyサンプラー」というのはまさにIBLに適したモードなのです。

 Skyサンプラーの利点は「簡単で、速くて、画質がいい」ことです。欠点は「空オブジェクトから放射された光しか計算しない」ことです。つまり、HDRパノラマ画像は空オブジェクトにしか貼れず、またオブジェクト間の間接照明は計算できません。

 それでもまあ、とにかくやってみましょう。レンダリング設定の「グローバルイルミネーション」特殊効果ページで、「一般」タブを開き、「GIモード」を「Skyサンプラー」に切り替えて、「画像表示にレンダリング」して下さい。

図014-7

 ちょっとザラザラしていますが、そんなにひどい絵ではありません。レンダリング時間は「27秒」でした。

 それでは、「グローバルイルミネーション」ページの「スカイ」タブで、「サンプル数」の値を「64」から「256」に上げて「画像表示にレンダリング」してみて下さい。

図014-8

 まだ多少ザラついていますが、それなりの画質に落ち着きました。レンダリング時間は「89秒」で、これも実用的な範囲に収まっています。

 それでは次に、もう一枚のHDRパノラマ画像を使ってレンダリングしてみましょう。このサンプルでは、ステップ1の図014-3aの画像を「sky_1」マテリアルに、図014-3bの画像を「sky_2」に読み込んでいます。そして各マテリアルを、「sky_1」、「sky_2」オブジェクトに適用しています。

 したがって、オブジェクトマネージャで「sky_1」と「sky_2」の「表示」を切り替えれば、IBLに使うHDRパノラマ画像を切り替えられるわけです。それでは、HDRパノラマ画像を切り替えて、「画像表示にレンダリング」して下さい。

図014-9

 レンダリング時間は変わりませんが、前の画像よりザラついています。これは「sky_2」に読み込んだHDRパノラマ画像のコントラストが、「sky_1」の画像よりさらに高いからで、「サンプル数」の値を上げれば解決します。

 しかし、これとは別に「中庭が暗すぎる」という大きな問題が発生しています。これは、オブジェクト間の間接照明を計算していないからです。私は011章で「拡散反射回数の値は2以下にするな」と書きました。しかしSkyサンプラーを使った場合、そもそもこの値は「1」に固定されていて、「2」に上げることはできません。つまり、Skyサンプラーを使っている限り、「中庭が暗い」という問題は絶対に解決できないのです。


 結論として、Skyサンプラーは「コントラストが低く、拡散反射回数が1回でも問題ないシーン」に対しては有効だが、「コントラストが高く、拡散反射回数を2以上に上げなければならないシーン」には使えない、と言えます。

 この問題の解決法については次の015章で説明します。